戦う為の武器なのか、守る為の武器なのか。
それとも、誰かを殺す為のモノなのか。
銃も剣も、人を傷付けるモノ。
「お嬢ちゃん……どうする?持って帰るか?」
お祭り。
楽園だからこそ出来る、日本の文化。
残された、僅かな宝。
「やっぱり…、私も林檎飴下さい」
楽しい筈の時間。
この時だけは、どうか和やかに終わりますように。
そう、心の中で祈っているのに、祭りを楽しもうとしない自分がいる。
「お嬢ちゃんもやるかい?ただし、3歩程下がって貰うがな」
「お金……払いませんよ?」
「いいって!一度もミスしなかったら、奢ってやるよ」
「えぇ!?そんなの無理じゃないですか。ねぇ、」
「やろう…かな。折角だし」
「えぇ!?」
は置いてある玩具の銃を取り、弾を持って6歩程下がった。
3歩だけでも少々遠いのに、さらに3歩も下がったのだから当たる確率は低い。
「総士。取った奴、全部乙姫に上げる」
「……頼むから、変な物は狙うなよ……」
「は〜い」
陽気な声で返事を返し、銃を握り締めて狙いを定める。
3人が見守る中、は1つずつ物を落としていく。
「うっそぉ…」
「って……、命中率良いんだな」
「射的系なら、が島一番だろう。遠見を上回る」
一度もミスする事なく弾を使いきり、溝口は偉く感心していた。
だが、落とした物が多い為3つ程選んで後は全て返し、林檎飴を貰ってその場を後にした。
袋には、乙姫の為に取った景品が入っている。
「……乙姫、喜んでくれるかな……?」
「が取ってくれた奴だ。喜ぶ筈さ」
「なら……良いんだけど」
玩具の銃。
人を傷付けない物。
だが、日頃自分が持っている物は傷付ける。
武器は、時としてその役目の意味を変える。
守る為ではなく、殺す為に引き金を引くかもしれない。
「自分を追い込むな」
一騎達に聞こえないように、総士は小声で言った。
自分の中で溜め込み、自分自身を殺す。
それがである事を、総士はよく知っていた。
自分も、と同じだから。
「僕は、を信じてる」
「………うん」
武器は、人の想いで姿を変える。
だから、道を踏み外さなければ意味は変わらない。
誰かが支えてくれれば、きっと大丈夫。
は小さく笑った。
「やっと……笑ってくれた」
総士は安堵の表情を浮かべ、の手を取った。
繋がれた手は、とても温かかった。