授業中は静かな時間を過ごし、休み時間になれば騒がしい時間の中で過ごす。
他愛もない日常会話。
何も変わらない日々の生活。
「休み時間で静かな所って言ったら、やっぱり此処だけかな?総士」
教室から姿を消していた幼馴染兼家族である総士は、屋上で1人読書をしていた。
温かい太陽の光を受け、爽やかな風に頬を撫でられる。
総士はひょっこり出て来たに視線を移した。
「どうかしたのか?」
然程心配そうではないものの、一応聞いてくれる事に自然と笑みを浮かべる。
「何でもないよ。ただね、教室にいると似合わないから、私」
教室にいる事が苦痛だとは感じない。
クラスメイトとは仲も良く、充実した毎日を送っていた。
けれど、どんなに仲が良くとも立ちはだかる壁がある。
「此処が楽園でいられるのも・・・・・・あとどれだけ時間が残ってるのかな」
幼馴染である一騎には話せない、大切な事。
島の子供の中で唯一この話が出来る人は2人。
そのうちの1人が、同じ場所にいる。
「時間を延ばすか、縮めるかは僕達次第だ。今は・・・・・・あまり考えない方が良い」
「判ってるんだけどね。やっぱ、考えちゃう訳で・・・」
「だから眠れない?」
「うっ」
図星、と言いたげに言葉を詰まらす。
総士は呆れて溜息を漏らし、本の間にしおりを挟んだ。
「に言われた。『どうしようもない片割れに安心出来る場を与えて欲しい』って」
「どうしようもないって・・・・・・。私の知らない間に言ったのね。酷い奴」
「でも、心配してるのは変わりがないだろう?」
総士は本を置いてを手招きした。
不思議そうに眺めていただが、総士の隣に座り込むと腕を掴まれて引き寄せられた。
「ちょっ、ちょっと総士ッ!」
抜け出そうとするが、男の総士に力が敵う訳もなく、ただジタバタするだけの。
「午後の授業、サボろうか」
優等生と言う言葉が似合う総士に限って、絶対聞けないだろうと思っていた言葉。
はピタリと動きを止めた。
「・・・・・・それ、本気で言ってる?」
「冗談のつもりで言ってないけど」
「なんだってまた・・・」
「は付け足して言ったんだ。僕も安心出来る場所で休んだ方がいいって」
「それで?何で私が巻き込まれるの?」
ふと思う1つの疑問。
総士は悪戯っぽく小さく笑い、疑問に答えた。
「僕の安心出来る場所はの傍だけだから」
1人で納得して、総士はを抱きしめたまま瞳を閉じた。
ただ、納得していないは予鈴のチャイムを聞いて慌てる。
慌てたところで、今の総士から逃れる事は出来ない。
「もぉ・・・。一騎に何言われても知らないからね」
暴れる事も声をかける事も止め、は総士に抱かれながら眠りについた。
遠くの方で授業始まりのチャイムが鳴ったように聞こえたが、意識をほとんど飛ばしていたにはどうでもよくなっていた。