好みは人それぞれだから、別に良いと思う。

 でも、どれだけ似ていても違うモノは違うのだと、一騎は思った。

 休憩室でリクライニングを倒し、休んでいた一騎は差し出されたコップに気付いた。

「えっ、?」

 差し出したのは驚くべき事にで、一騎は少し躊躇った。

 だが、相手は飲み物に付いて迷っているのだと勘違いしたらしく、紅茶だ、と言って無理矢理渡した。

「あ、ありがとう・・・」

 返事を返す事なく隣の椅子に座り、コップに口を付ける。

 一騎は不思議そうにを見詰めていた。

「何だ?」

 視線を向ける事なく尋ねると、一騎は慌てた様子で言葉を探す。

 咄嗟に出た言葉は、あまり関係のないモノだった。

「好み・・・・・・違うんだな」

「好み?・・・・・・・・・あぁ、と比べての事か」

 少ない言葉で理解したは、再び紅茶を飲む。

「俺は紅茶派」

「他は?」

「他ぁ?後は・・・・・・、犬より猫。歌より楽器」

「楽器?出来るのか?」

「あぁ。が出した歌は俺が作曲したし、実際ギターやピアノとか弾いてた」

「嘘!?」

 一騎は思わず大声を出した。

 確かに、の指先は細い。

 と変わらない細さだ。

 その細さでファフナーの整備や、システム整備をやっている。

 ギターやピアノが弾けるのであれば、細くて当たり前かもしれない。

「驚く事・・・なのか?」

「いや・・・・・・意外だったから・・・・・・。他は?」

 今日の真壁は積極的だな、とは思った。

 その後、2人が休憩室から出たのは1時間後の事。

『関わり持たないんじゃなかったっけぇ?』

 が楽しそうに言う。

「煩いっ」

 が小さく言い返すと、隣で一緒に歩いていた一騎が首を傾げる。

「いや、別に」

 慌てず冷静に対応しただが、中でが笑っていたので思いっきり壁を蹴りたくなった。

 だが、隣に一騎がいる。

 はそれを良い事に、を虐めていた。



 平凡な、ある1日の事だった。

 ストレスが溜まった事は・・・・・・言うまでもない。