よく、遠い目で何かを見ていた。

 何かがある訳でもなく、ただ、果てなく続く海を眺めていた。

「何時も此処に来るのか?」

 俺が何となく問いかけると、彼―――は首を横に振った。

「今日は偶々来ただけさ」

 アルヴィスの制服を着こなし、大人びた雰囲気を出す。

 と双子……なのかは良く判らない。だが、多分そうなのだろう。

 けれど、その事に関しては何も言わない。

「『あなたはそこにいますか』」

 呟かれた言葉は、何時もフェストゥムに投げ掛けられるもの。

「答える必要はないが、俺は時々思うよ」

「何を?」

「俺は、この問に答えを持ち合わせていない……と」

 哀しい横顔に、息を呑んだ。

「俺は確かに存在しているが、俺は何処にもいない」

「何だよ……それ」

「さぁて、何だろうな」

 ふっと笑うに、俺は騙されそうだった。

「さて、帰るか。仕事、まだ残ってるし」

 話は終わった。

 彼はそれ以上何も言わず、俺に背を向けて地下へ帰って行った。



 俺はこの時、の気持ちを知らなかった。

 何を思って言ったのか、何を考えているのか、俺には理解出来なかった。

 多分、の事は誰も判らないんだと思う。

 何時も近くにいる総士でも、双子かもしれないでさえも・・・。

 彼の本当の気持ちは謎のままなのかもしれない。

は……ちゃんといるよ」

 俺のこの言葉は、貴方に届いていますか…?